*きみとぼく『dream』*

 

 

 

「うわあっ」ときみが飛び起きたのは

 

真夜中の三時前だった。

 

ぼくはもちろん驚いて身体を起こし――愛しあったあと、ぼくらはべつべつにシャワーを浴びて一緒に眠る――、どうしたの、と訊ねる。

 

このとき、驚いているからといって詰問するような口調になってはいけない。

 

たとえひどく激しい行為のあとで、心身ともに鉛のように重くくたびれている上に、明日も仕事だとしても。或いはたったいま眠りに落ちたところだとしても。

 

きみが嫌な夢で飛び起きたのなら、

 

どうしたの

 

と優しく訊ねるのは、もはやぼくの使命だからだ。

 

大袈裟だってわらうかい?

 

恋なんていうのは、真剣に道化を演じるようなものだって、ぼくは思っているんだけれど。

 

「死んだ」

 

きみは暗闇を見つめたまま言う。

 

引き締まった腕。野生のけものみたいになだらかに隆起する腹筋。アンバランスなくらい真白な肌。

 

「誰が」

 

ぼくはきみを見つめて言う。

 

「お前が」

 

「――そりゃ、ないよ。生きてるじゃないか。いま、こうして」

 

ぼくは言う。きみが混乱しないように、ゆっくりと。

 

きみは油の切れかけたロボットみたいにぎこちなく振り向くと、

 

「ああ」

 

と呟いて、ほろほろ、泣く。

 

子供みたいな赤い泣き顔をした頬を両手で包み込み、

 

「夢ってね、現実には起こらないことばかり起こるんだよ」

 

と、ぼくは囁く。

 

髪をすいて名前を呼んだり、頬に唇を当てて震わせ、「ぶぶぶぶぶ」と摩擦音を立てたりして、どうにかきみが笑うように。そうしてふたたび眠りにつけるように。

 

きみは知らないだろう。

 

朝起きて、すうすう眠っているきみが視界に入ったとき、

 

うわあっと叫び出したくなるくらい、

 

ぼくが驚くことなんて。

 

夢かと思うくらい

 

ぼくが驚くことなんて。

 

――夢ってね、現実には起こらないことばかり起こるんだよ――

 

夢のようだと

 

ぼくが思っていることなんて。

 

きみは。

 

 

 

*fin*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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