*きみとぼく『holiday』*

 

 


いつも忙しくしているきみが珍しくどこにもでかけない土曜日、ぼくらは昼間から目一杯怠惰に過ごした。

 

すっかり太陽の昇った昼に近い朝に目を覚まし、ベッドの上で朝ごはんがわりにキャラメル味のポップコーンを食べた。

 

キャラメルの香りのするくずにまみれながら、終わりのない緩慢な動きのセックスをして、汗で湿った身体を重ねたまままた眠った。

 

二度目に目覚めたときにはすっかり日が落ちていて、ぼくらはぐうぐう鳴るお互いの腹の音にいちいち馬鹿みたいに笑いながら、珍しく一緒にシャワーを浴びた。

 

セックスはせずに。

 

だけどキスは何度かして。

 

きみの、指先の力ばかり強い、へたくそなヘッドマッサージを受けたりして。

 

外食をするためにおもてにでたつもりだったのに、きみが突然散歩をしようなんて言うものだから驚いた。空腹にめっぽう弱いのはぼくらの数少ない共通点のうちの一つだから。

 

「××マートまで歩こうぜ。夕飯の買い出しがてら」

 

ぼくのコートのフードをなおしながら、きみは少し遠くのスーパーマーケットの名前を口にした。

 

「夕飯の買い出しって……。作るのはぼくなんだけど?」

 

ぼくの文句なんて、きみはもちろん聞いちゃいない。照れ隠しだとでも思っているんだろう。

 

実際、どうなのかな。ぼくは、うんざりしている。

 

だけどそれは、夕飯を作らなきゃならないことに対してじゃなくて、たぶん、いつまでも照れてしまう自分に対して。

 

いつまでもきみを好きな自分に、ぼくはうんざりしている。

 

シャワーを浴びてから大雑把にドライヤーをあてただけのきみの金色の髪はあちこち跳ねている。

 

ぼくの数歩前を歩く後ろ姿は、だから妙に子供っぽい。

 

ぼくは財布と鍵の入ったコートのポケットに手を入れて、

 

「そっちじゃなくて、こっちだよ」

 

なんて小さく叫ぶ。

 

数メートル先できみは止まり、ひよこみたいな髪をふうわりさせながら振り返って、笑う。そしてぼくのもとに戻ってくる。

 

住宅街に、ぽつりぽつりとまばらに立つ街灯が、スポットライトみたいにきみを照らす。

 

まるいシルエットのコートを着たきみはまるで少年のようだ。

 

ほんの数時間前まで、熱の籠った腕でぼくをさんざんな目に遭わせていたというのに。不思議だな。

 

「いい休みだったね」

 

街灯の光に負けない、黄色い月を見上げて言った。

 

一日中いい天気だったのだろう、と思いながら、だけど天気なんかどうでもいいや、とも思った。

 

きみと過ごす怠惰な休日。

 

ぼくらは一度だってカーテンを開けない。

 

「まだ終わってない」

 

きみは笑い、ぼくの腰にそっと手のひらをあてる。抱き寄せるでもなく、絡めるでもなく、そっと支えるように。

 

「まだ、終わってない」

 

きみの声を耳元で聞きながら、

 

――いい休みだった。

 

ぼくはふたたび、そう思った。

 

 

 

 

 


*fin*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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